『「自然」という幻想』エマ・マリス(草思社文庫)2021年

外来種との向き合い方を変える


手つかずの野生(ウィルダネス)と、多自然ガーデン


私たちは自然のありかを見失った。私たちは、あたしたち自身から、
自然を引き離し、見失ってしまったのである。
私たちが間違ったのは、自然は、「私たちと離れたところに」、
どこか「遠く」にあると考えるようになったからだ。
p11

 本書は、自然への新しい見方をテーマとしています。
 手つかずの野生(ウィルダネス)の自然が本来の究極のかたち、外来種は一律悪いもの。
という価値観に警鐘を鳴らしています。

自然はいたるところにある。しかし、どこにあるとしても必ず共通する特徴がある。
「手つかずのものはない」、ということだ。
p13

 そして、『多自然ガーデン』(日本語訳)という価値観を提唱しています。
※原文、rambunctious garden「ごちゃまぜの庭」

公園や保護地域だけが多自然ガーデンなのではない。ありとあらゆる場所が多自然ガーデンだ。
公園でも、農地でも、パーキングやファストフードショップの敷地でも、
あなたの家の庭でも、環状交差点の緑地でも、自然保護を進めることができる。
p14

 多自然ガーデンでは、地球上のすべての自然環境が、人間の干渉・管理のもとにあるため、
消失しつつある自然の保護だけでなく、外来種含め、新たな価値創造に意味を見出しています。

 このあたりは、現代の「人新世」と呼ばれる時代の、人間が自然環境を過度に干渉、管理、さらに破壊する経済活動等を助長しないよう、慎重に実施していくことが求められます。


モデル:イエローストーン国立公園


 本書でも紹介されているアメリカのワイオミング州にあるイエローストーン国立公園は、9000平米キロもの広さを持ち、「母なる公園」と呼ばれています。1860年代になって調査隊が編成され、調査が開始されました。
 時代とともに、その原初性、手つかずのウィルダネスは崇拝の対象となっていき、「イエローストーン・モデル」として世界中にそのモデルが輸出されています。
しかし、そのイエローストーンも先住民が1万年以上も住み、人間の手によって管理されてきた土地でした。
 現在でも、バイソンなどの野生生物、火山や地熱地帯など、手つかずと人間の管理とのバランス、矛盾が課題となっています。

 植物であっても、動物であっても、生き物は長い年月をかけて移動しています。
山火事、洪水、ありとあらゆる自然災害や、人為的に物体に付着し、紛れ込む
短期の移動であっても、意図的に持ち込む短期の移動であっても、
生物が誕生して以来、常に攪乱を繰り返しています。


いま、ここ、現在


結論は、残念ではあるが、あらゆる状況に有効な唯一の最終目標は存在しない、
ということだ。つまり、すべての土地について、
所有者、管理者、行政機関、土地に関心を持つ人々が協力して、
共通の最終目的を見出すために詳細に議論するしかないのだ。
これはとても難しいことではあるけれども。
p308

 かつて何処かの誰かが、設定した基準に囚われずに、
いつかどこかにあった理想の状態、昔に戻す。のではなく、現在や未来に向かって、皆が共同して、何が必要で、何が必要でないかを議論すること。
 そういった重要性について知ることができる一冊です。


文庫 「自然」という幻想 多自然ガーデニングによる新しい自然保護 (草思社文庫) [ エマ・マリス ]

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